読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

現役産科医の視点

生命誕生の現場、産科医の視点から

アンダーヘアを処理する人は性病になりやすい

アンダーヘアを定期的にトリミングや全除去している人は、性感染症の危険性が高くなると報道され論議を呼んでいます。

元になったのは次の研究論文です。

「Correlation between pubic hair grooming and STIs」BMJ Journals 2016 Dec 05

この信頼性の高いジャーナルに掲載された内容によると、アンダーヘアを全除去したり、週に1回以上処理している人は、処理を全くしない人に比べ、皮膚接触による性感染症、たとえば性器ヘルペス、HPV(子宮頚癌原因ウイルス)感染を経験するリスクが3.5~4倍高いとのことです。

「アンダーヘアの処理は衛生的」とする考えが一般的な国もあり、警鐘を鳴らす結果となりました。性感染症予防のために、さらに詳細な研究が期待されています。

日本でもアンダーヘアを処理している女性が増えて、8~9割がしているとのネット情報もありますが、これは都会の婦人科クリニックや、皮膚科、エステ店など、かなり偏った集団のデータと考えられます。(おそらく勧誘の意図があります)

通常の産科外来には、一般女性が妊娠して来院されますが、陰毛を残らず除去している人や、明らかな形にトリミングしている人は、少数派で1割もいません。

夏の水着のシーズンならともかく、年中、明らかな処理をしている人には、確かに性感染症が多い印象があります。

 

定期的に処理している人に性感染症が多いのは、2つの要因が考えられます。

性器周囲の皮膚に小さな傷ができる。
健康な皮膚は、様々なメカニズムで外部からの病原菌の侵入を防いでいます。目に見えないような小さな傷でも、その防護壁が破れ、感染しやすくなります。
以前は、帝王切開などの腹部手術の前に、手術する範囲をカミソリでうぶ毛まで剃っていましたが、それは術後の創部感染の原因になることが判明し、現在では、刃が直接皮膚に触れないバリカンで、最小限のカットを行なっています。

性行動が活発な傾向がある。
アンダーヘアを習慣的に処理している人は、そうでない人に比べて、経験人数が多く、セックス頻度が高いと報告されています。当然、性感染症に接する機会も増えることになります。

 

妊娠検査薬が陽性に出て、初めての産科受診の前に、「私、毛深いから、処理をしてから受診した方がよいかしら?」と悩む人もおられるようですが、ありのままで受診されることをお勧めします。地域差もあると思いますが、気を利かせたつもりが、あらぬ誤解(プロの女性?)を招くことにもなりかねません。

「卒乳」と「断乳」 本当は深い問題

2002年、母子手帳断乳に関する記載が削除され、「断乳」という言葉は過去のものになりつつあります。しかし、産後の職場復帰や保育所問題も絡んで、悩ましい事情をかかえた母親に、適切な計画的卒乳(断乳)を指導できないのでは母乳の専門家と言えません。

順調に半年以上、母乳育児を続けてきたお母さんが、事情があって母乳をやめたいと専門家に相談した時、「子供が母乳を欲しがっているのならやめる必要はない」と意見されただけだった、という話もあります。

【卒乳】母乳で育ってきた赤ちゃんが、徐々に母乳を必要としなくなり、母乳哺育から卒業していくこと

断乳母乳で育ってきた赤ちゃんの母乳哺育を、ある時期に、母親が意図的に終了させること。

卒乳と断乳のどちらが自然なのでしょう? 現在、多くの母乳専門家は卒乳が自然と考えていますが、本当は違うと思います。

NHKダーウィンが来た生きもの新伝説」では、地球上のさまざまな生物の営みが紹介され、哺乳類の回では、必ず生殖・出産・育児と、母と子の感動的な子別れのシーンがあります。

家畜以外の哺乳類は全て、必要十分な母乳哺育ののち、母親は、あらかじめプログラムされていたかのように本能的に、母乳哺育を中断し子別れします。決まった時期に子供を突き放す場合もあります。

哺乳類であるヒトの祖先、クロマニヨン人も、日本列島の縄文人も、新生児・乳児期を(幸運に恵まれ)無事に育てることができたのちには、ある程度決まった時期に断乳をしてきたと考えられます。

確かにWHO(世界保健機構)は、「2年を超えても授乳を続けてよい」としていますが、「2年を超えて授乳を続けるべき」としているのではありません。乳児が安心して飲める水がない国や、乳幼児の栄養が十分ではない国では、母親というフィルターを通した飲料が最も安全ですが、最良ということではありません。

f:id:akachann99:20170308160634j:plain

 

◆計画的卒乳(断乳

順調に1年以上の母乳哺育を続けてきたお母さんが「そろそろ母乳を止めようかな?」と思うのは、本能的な感覚です。多くの場合、子供がタイミングを教えてくれますが、母親が子供の自立を感じる、生後1歳から1歳半の間と考えれらます。

それは、子供が立って歩く(重力に逆らって立つ)ようになり、自らビタミンD、カルシウムを摂取して、くる病を防ぐ必要がある時期であり、目の前にあるものを手で口に運ぶ(何でも口に入れたがる)ようになる、母親にとって次の妊娠に適したタイミングでもあります。

計画的卒乳(断乳)は季節や子供の体調に配慮した上で、ある程度計画的に行うと子供や授乳のトラブルも少なくて済みます。ただし、やむをえず早期断乳する際も、少なくとも生後半年は母乳哺育を優先しなくてはいけません。

 

◆桶谷式など

日本では、1950年頃まで自宅分娩が90%以上でした。1980年代に病院でのお産が90%以上となりましたが、母乳哺育は医学の対象と見なされず、医師や病院助産師の多くは粉ミルクメーカーの手先のようなことをしていました。

その時代に、母乳保育や育児の経験や知恵をまとめた産婆・助産師が全国各地におり、最も有名なのが桶谷式です。

桶谷式の断乳では、おっぱいに「へのへのもへじ」の絵を描いて驚かせたり…、のようなことが強調されますが、実際に、一連の流れを経験すれば、母親にとっては母乳保育の完走ゴールであり、子供にとっては最初の自立(子供の表情から本人の意思が伝わってくる)であり、成人式(社会が個人を認める)以上に親と子の信頼感あるコミュニケーションであることが分かります。

もし私が、ヒト生態を記録する映像作家だったら、この計画的卒乳(断乳)をヒト育児の感動クライマックスにもってくると思います。

◆乳幼児のくる病

最近、“くる病”が増えています。

“くる病”は、ビタミンDが不足して、乳幼児の骨の発育が障害され、背骨や四肢の発育不全、異常な湾曲を生じる病気です。ディズニー映画「ノートルダムの鐘」の主人公カジモドの病気で、日本でも1960年代までは、時々、街で見かけました。

過去の病気と思われていた“くる病”が、再び増えた原因はいくつかありますが、ほとんどが母乳栄養の乳幼児です。良いはずの母乳哺育のどこに問題があるのでしょうか? 三つの原因が考えられます。

1.母親のビタミンD摂取不足

 100年前のアメリカで、乳幼児が牛乳由来の人工乳を飲むようになりくる病が流行したため、人工乳にビタミンDを添加するようなりました。当時、適度に日光に当たっている健康なお母さんに母乳哺育された乳幼児はくる病にならないとされました。ところが、食生活の変化で、母乳中のビタミンDが不足し、ビタミンD添加の粉ミルクと逆転しました。

2.日光照射の不足

 ビタミンDは、日光照射により皮膚でも作られています。外出不足や過度な紫外線対策により、ビタミンDが欠乏しています。一日中、家にいて生活できる便利な時代、適度な日光照射は必要です。日本では、晴れた日に顔と肘から先の腕を15分程度、直接日光に当てるだけでビタミンDが作られると考えられています。

3.卒乳・断乳の遅れ

 卒乳が遅れた方の中に、乳幼児のビタミンD不足がみられることがあるのは事実です。自分で歩くことのできない時期に母乳が良いことは確かですが、生物学的に適したタイミングで計画的に卒乳(断乳)することは、ヒト生態として理にかなっています。

最新、お産事情。帝王切開の方が安い?

◆米国医師会雑誌の2017年1月3日配信記事
「中国における帝王切開率(帝切率)の地域差と傾向 2008~2014」
によると、
・中国の帝切率は2008年の28.8%から、2014年の34.9%に増加した。
・2014年、中国の31州の間で帝切率に4.0%~62.5%もの地域差があった。
・帝切率の全体的な増加傾向にも関わらず、2014年、17の大都市圏のうち14カ所でピーク時よりも4.1~17.5%帝切率が減少した。
・特に帝切率が減少した4つの大都市圏で母体死亡や周産期死亡の増加はなかった。
とのことですが、実は、これには隠れた事実があります。

◆中国人妊婦の話
かつて、中国の方はすぐに「帝王切開にして!」と訴えることが多く、帝王切開を先進的な出産と考えているフシがありましたが、ここ数年、中国の方の出産が増え、印象が変わってきました。
先日も、中国東北地区の大都市圏出身の方が「第2子の出産・産後ケアを日本で」と希望され来院しましたが、前回3600gの子を中国で普通分娩されたとのことで、
「一人目の出産はがんばりましたね。赤ちゃんが大きめと判って、帝王切開を勧められませんでしたか?」と聞くと、
彼女は少し“ムッ?”とした表情になり、
「医者にお金を払って、自然分娩を待ってもらったんです」
と、次のように教えてくれました。
中国でも、安易な帝王切開をしたくないと考える妊婦は増えているのに、医療機関があれこれ理由をつけて、すぐに帝王切開してしまう。幸い、彼女を担当した医師は優しい産科医だったので、希望を聞いて分娩になるまで待ってくれたが、VIP用の分娩室を貸し切るために、追加料金が必要だったとのことでした。

医療事情の悪い田舎の病院や、都市部でもお金がなければ、少しのことで帝王切開されてしまうと、彼女は不満顔になったようです。
産科医として、彼女の気持ちも、医療機関の思いもよくわかります。現在、分娩をしっかり管理しようとすれば、いつになるか判らない分娩のために産科医、助産師の拘束時間も長くなり、帝王切開よりも実質コストのかかった自然分娩になることがあります。
中国人妊婦の中には、お金がかかっても良いから自分が希望する分娩・産後のケアサービスをしてほしいと遠方から来院される方もあります。

今回の配信記事の本質は、中国では経済力があれば、母子のリスクは変わることなく帝王切開率を下げることができるということを示しています。

現在、日本のお産も帝王切開率は上昇中ですが、すでに一部では、昔ながらの自然分娩のためのLDR分娩室に、オプション料金を設定してしている病院もあります。健康保険扱いや生命保険入院特約などもあり、近い将来、「帝王切開の方が安い」ということになるかもしれません。良いことではありませんが……、

 

「地中海料理ピラミッド」と「食事バランスガイド」

地中海料理ピラミッド」は、バランスのとれた健康食として、栄養学・医学において、世界的に有名です。一方の、「食事バランスガイド」は日本の厚労省農水省によるもので、一見似ていますが、食に対する考え方が根本的に違います。

地中海料理ピラミッド】

f:id:akachann99:20161231145705p:plain

引用:世界遺産になった食文化2 地中海料理 WAVE出版 p7

地中海料理ピラミッドの特徴
 ・毎日、週、月単位の食のガイドになっている。
 ・何世紀も前から、地域で入手できる伝統的食材を使う。
 ・栄養素について神経質に考えなくても、自然に整う。 
 ・ピラミッドは安定感がありバランスが取れている。
 ・地中海周辺の健康的な生活スタイルをイメージできる。
 ・政策、業界団体の思惑が入っていない。

 忙しい毎日の食事と、週末の伝統的な家庭料理、地中海周辺を舞台にしたドラマが想像できます。

 

【食事バランスガイド】 厚労省農水省

f:id:akachann99:20161231145932p:plain

引用:「食事バランスガイド」母子手帳版,(厚労省農水省HP)


食事バランスガイドの特徴
 ・食事を一日単位で考えている。
 ・栄養素の計算上の組み合わせから食材が決まる。
 ・“コマ”を安定して回すためには努力が必要。
 ・生活スタイルについては吹き出しで付け足している。
 ・管理栄養士の献立作り、栄養指導に役立つ。
 ・政策、業界団体の思惑が入っている。

 食材の中には、毎日ではなく、週に1回程度の摂取が適切なものもあります。かつて、お母さんは1週間、1か月を単位に食のやりくりをして家族の健康を管理していました。 
 食事バランスガイドは、新人の管理栄養士でも一日単位で食事を管理できるように作られていますが、栄養士は料理を作りません。実際の調理場では、地域の習慣や季節の食材を理解し、修業を積んだ職人である調理師と、意見の対立もしばしば起こります。
 現在の管理栄養士はほとんど専用パソコンソフトで献立管理をしており、この「食事バランスガイド」は、いわば国民総家畜化ガイドラインのようなものです。

 

帝王切開の「帝王」の本当の由来

帝王切開術の「帝王」(日本:帝王、独:Kaiser=カイザー、米:Cesarean=セサリアン)の言葉の由来については、ローマ皇帝ジュリアス・シーザーカエサル)のエピソードからとか、ドイツ語に翻訳するときの誤訳とか、さまざまな説があります。しかし、これらは歴史学者やお産を知らない医学者が机上で考えたことで、いずれも本質を理解していません。

合併症などがなく普通の経腟分娩を予定していた妊婦さんでも、約3%(多く見積もって5%)で分娩の進行が停止してしまいます。例えば、出口から胎児の頭が3分の1見えているのに、どうしても産まれないというようなこともあります。

このような場合、現在では母子を助けるために帝王切開が行われますが、医療として一般的になったのは50年ほど前です。帝王切開術の手技が完成しておらず、電気がなく、医療器具がなく、血圧、意識レベル、胎児心拍、血液検査などのモニタリング手法がなかった時代なら、どうなっていたでしょうか? 

出血が増加し、子宮内感染をおこし、やがて母親は衰弱し、意識レベルも低下します。帝王切開が一か八かの危険な手術だった頃は、母体の生命を優先するかどうかを家族と相談し「母親だけでもなんとか助けてください。子供はあきらめます」となれば、胎児縮小術が行われました。具体的には、分娩途中の児頭を穿刺して脳みそを掻き出し、胎児を小さくして分娩を終わらせます。

胎児縮小術をしなければ、母親は衰弱し、母子ともに亡くなっていたかもしれません。私自身は経験がありませんが、大学の医局に入った1983年には、まだ、分娩室の隣の器具室に、胎児縮小術用の器具が置いてありました。

ところで、このような状況が、帝王やお殿様の「お世継ぎ」を宿している母親に起きた時、お仕えする医師、侍従医ならどうするでしょう。分娩中に母親が気を失い反応が無ければ、もう助からないと判断し、世継ぎを優先して割腹することもあったでしょう(私がその時代の侍従医ならしたかもしれない)。

世界中の古代文明、古代日本において人身御供や人柱が行われていたことは事実ですが、人間の歴史の中では、出産に際して、母親の命よりも胎児が優先され、呪術師か誰かが母親の腹を切開したことはあっただろうと思います。国家が成立して以降は、法律や倫理のもと、一部の支配者や為政者(暴君でなくても)には許容されたと考えられます。庶民は母子共に死亡していたわけですから。

「帝王切開」は誰かが提案、定義した言葉ではないにもかかわらず、世界中で「帝王」という名称が広まったのは、人の心理の深層に、その概念を受け入れる要素があったということです。

テレビドラマ「ドクターX」第4シリーズ第10話で、黒木メイサ扮する妊婦が、母親の命か、胎児の命かの選択で「一族のために私の命よりもおなかの子供を優先して」と言います。現代の価値観では違和感がありますが、人間の長い歴史においては、むしろ当然の台詞だったかもしれません。
ちなみにドラマでは、米倉涼子扮する大門未知子が「わたし、失敗しないので」と母親と胎児の両方を助けます。

akachann99.hatenablog.com

健康に良い食事「地中海料理」と「和食」の真実

「世界中で、一番、健康に良い食事は?」と聞かれると、日本人の多くは、
「そりゃ、和食だろ。世界無形文化遺産にも登録されて、まちがいない」と答えるかもしれません。
ところが実は、日本以外の世界標準の栄養学、医学の答えは「地中海料理」です。
地中海料理(地中海式ダイエット)は2010年11月、フランス美食術、メキシコ伝統料理とともに、ユネスコ世界無形文化遺産に登録されました。「地中海式ダイエット・栄養学のモデル」と呼ばれています。この場合のダイエットは、元々の意味である料理や食物のことを指しており、減量目的のダイエットではありません。

地中海料理の概念】
穀類、魚類、その保全・加工・消費に関わる風景から食事に至る技術、知識、習慣および、伝統に基づく社会的慣習。魚介類、穀類、乳製品、野菜、果物類などをバランスよく、脂肪分は肉類を少々、オリーブオイルを中心に摂取する。
地中海料理には、地域社会の健康や、生活の質、より良い生活に役立つこと、少量のワインを飲みつつ、ゆっくりと会話をしながら食事をするスタイルを含む。

地中海料理についてー
スペイン・イタリア・ギリシャ・モロッコなどの地中海沿岸では、昔から心筋梗塞、脳血管障害、糖尿病などの生活習慣病が少ないとされ、この地域の伝統的な食事が影響していると考えられてきました。

地域で取れる様々な食材、加工、流通、伝統的な調理法、食を中心とする生活習慣、市場に並ぶ採れたての魚介類、山積みのオリーブの実やトマト、焼きたてのパンなどの風景、大皿に盛られた料理を、少量のワインを飲みつつ、ゆっくりと語らいながら食べる様子など、すべてを含んで「地中海料理」です。
 

一方、和食は遅れて2013年に「和食 日本人の伝統的な食文化」として、世界無形文化遺産に登録されました。

【和食の特色】

 ・四季や地理的多様性による新鮮な山海の幸
 ・自然の美しさを表した盛り付け
 ・正月や田植えなどとの密接な関係

四季の豊かな自然に恵まれ、地域の野菜や魚介肉類をいただく「和食」はバランスのとれた豊かな食事ですが、ここで示される日本の食文化は、すでに失われつつあります。

厚生労働省農林水産省が作成した「食事バランスガイド」も、栄養学的な分析から、この成分がこの割合で含まれなければいけないと、食事の因数分解のようで・・・、美味しそうではありません。「地中海料理」のような、地中海沿岸の日常生活に溶け込んだ食文化の美しさがないのです。

無形文化遺産「和食」は高級料亭の食事ではなく、地域の伝統的な家庭料理を中心に、自然の恵み(八百万の神)に感謝しながらいただく、食生活習慣です。この「和食」文化は、今、誇れるどころか、守れるかどうかの危機にあります。

日本は、ファストフードの普及、食事サプリメント、栄養補助食品の認定など、まるで家畜の飼育のような食生活を受け入れるのでしょうか?

食の考察 「サプリメントとがん」

生活習慣と”がん”の予防について、世界がん研究基金から
「食物、栄養、身体活動とがん予防の要約」
の勧告が出されています。その勧告8では、

◆食事のサプリメントについて
サプリメントに頼らず、食事のみから必要な栄養をとること」

◆行政に対する公衆衛生上の目標
サプリメントではなく、食事から必要な栄養素を十分に摂取できる人を増やすこと」

◆個人に対する勧告
「食事サプリメントは、がんの予防に関しては勧められない」
注)病気や、栄養が不十分な時には、サプリメントが役に立つ場合もあります

【以上の理由】

「信頼できる研究報告によると、多量のサプリメントは、がんの予防になる場合もあれば、がんを引き起こす可能性もある。リスクが高くなるか低くなるか、正確には予測できず、予想もしない健康への悪影響を起こす可能性があるので、一般の人々に広くサプリメントを勧めるわけにはいかない。特定の疾患や欠乏症の場合を除き、最善の方法は、多種類の栄養素を含んだ栄養豊富な食事を取ることである。」

-要約ー となっています。

 

◆栄養豊富な食事とは?

食物連鎖の頂点に立つヒトにとって、栄養豊富な食事とは、多種類の栄養素が必然的関係を保っている健康な有機体をいただくということです。その土地の環境や季節に適応した、健康な生物(有機体)が、最も適した食事です。すべての栄養素は有機的に連携しており、どれかが減少したり、増加したりすれば、バランスは崩れます。

【有機的】
「有機体のように、多くの部分が集まって1個の物を作り、その各部分の間に緊密な統一があって、部分と全体とが必然的関係を有しているさま(広辞苑)」

 

人間にとっては、食の楽しみも大事ですから、必然性だけで食事を考えることはできませんが、美食の食材、例えば、フォアグラやあん肝は脂肪肝、さしの入った牛肉やマグロの大トロは高脂肪体、甘い果物は植物の糖尿病の状態です。決して、健康な有機体ではありません。それを食べるのにふさわしい季節があるとしても、日常的に年中、食べてよい食材ではありません。

 

◆食事サプリメント
サプリメントも、ある栄養素が欠乏状態の時には有用ですが、その栄養素が必然性もなく過剰になった場合には、程度の差はあっても、必ず有機体の統一が崩れます。
サプリメントの研究では、ある特定の栄養素を分析して「○○という成分が××に効く」と単純化された結論が独り歩きしがちです。ほとんどの研究では、栄養素が過剰の場合や、複数の栄養素の相互作用、想定外の作用についての検討は不十分で、中には意図的な成果を出すための、詐欺的な研究もあります。