現役医療者の視点

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「へその緒を切る」ことについての話

◆「へその緒を切る」ことについて

ネパールでの医療貢献が評価され、アジアのノーベル賞と呼ばれる「マグサイサイ賞」を受賞した岩村昇医師が行った活動の1つが、へその緒の切り方の指導です。

そもそも、へその緒を切る必要があるのかというと、実は「へその緒を切らないで」という考え方もあります。

「分娩の直後にへその緒を切るのは、ひどく残酷な行為です。それが赤ちゃんにどれほど破壊的な影響を及ぼすか、想像もつかないほどです。」(暴力なき出産:F・ルボワイエ著)

これは分娩直後の早期臍帯切断への批判ですが、一理はあります。通常は、へその緒を慌てて切る必要はありません。ほ乳類動物は出産時にへその緒がついており、自然に脱落するまでぶら下がっています。(新生児蘇生が必要な場合には、臍帯切断が必要になることもあります)

岩村医師がネパールを初めて訪れた1960年代、感染症による新生児死亡が大変多く、感染源はへその緒と眼でした。当時は、へその緒を農業用のハサミや調理用のナイフで切っており、感染の原因と考えられたため、岩村医師はハサミやナイフを火であぶる、へその緒を縛る糸の煮沸消毒などを指導したところ、劇的に新生児死亡が減少したとのことです。もし中途半端に「へその緒を切る」処置が行われず、自然脱落まで放置されていれば、新生児死亡はかなり避けられていたと考えられます。

年に数回、お産が急に進んで自宅やタクシーの中で出産になり、赤ちゃん、へその緒をどうしたら良いでしょうか?と電話で相談があります。

母親が落ち着いておれば、赤ちゃんは洗濯した乾いた大判バスタオルでくるんで母親に抱っこさせて、へその緒は切断せずにつながったまま胎盤と臍帯は洗濯したバスタオルか、大人用の紙おむつで包んで病院に向かうことを勧めています。慌てて自宅のハサミで切ったりしてはいけません。 

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