現役産科医の視点

生命誕生の現場、産科医の視点から

ハネムーン膀胱炎 本当の理由

ハネムーン膀胱炎 (Honeymoon Cystitis)、ハネムーン腎盂炎(Honeymoon Pyelitis)は、初めての性交後に発症する女性に多い尿路感染症です。今の人には、ピンと来ないかもしれませんが、お見合い結婚が多く、女性の初体験が新婚初夜だった時代によくみられた病気なので、昔からこの名前がついています。

現在でも、初回性交の後に同様の尿路感染症になる人はいます。症状は、頻尿、排尿痛、時に血尿などで、主な原因は肛門や腟周囲に付着する大腸菌などの腸内常在菌です。

性感染症(STDsexually transmitted diseaseではないかと疑うかもしれませんが違います。どちらかというと初々しい花嫁がかかりやすい、普通の急性膀胱炎です。

 

原因として次の3つが考えられます。

| トイレ我慢してしまう。

ハネムーンでホテルに泊まった際、部屋のトイレを使わずにわざわざロビーのトイレに行く人がいます。観光や食事の時もトイレを我慢しがちです。それまでのデートで、映画の前後やドライブ休憩の時に、気兼ねなく「トイレ行ってくる」と言える仲であればよいのですが、気を遣う、恥ずかしいなど、昔はそんなウブな人も多かったのです。

初回性交で常在菌を交換する。

人はそれぞれ、人生で築き上げた常在菌群の細菌種別が異なります。同じタイプの細菌のやりとりなら、既に免疫システムが学習済みですから感染はおきにくいのですが、未知のタイプなら感染を起こしやすくなります。これがハネムーン膀胱炎の最大の理由です。

膀胱炎にはならなくても、帯下(おりもの)の臭いの変化に気がつく人もいます。体臭の違いは、常在菌群の細菌種別構成の違いが主な理由です。常在菌群が交じり合い、やがて、お互いの臭いに馴染んでいきます。

処女膜裂傷からの出血。

処女膜裂傷で出血すると常在菌群のバランスが崩れ、特定の常在菌株が増加して、膀胱炎の起炎菌になりやすくなります。

 

男性にも同様の膀胱炎は起こりますが、当時は、男性の初回性交が、結婚初夜とは限らず、主に、女性の病気として名前がつきました。

海外では、性感染症ではない、一般細菌による性交後の膀胱炎を、ハネムーン膀胱炎とする記載も見られますが、本義は、初めての性交の後、または、長期間性交が無く久しぶりの性交の後に発症する尿路感染症です。