現役産科医の視点

生命誕生の現場、産科医の視点から

松嶋尚美さん「牛乳有害」発言、問題の真実

テレビ番組での松嶋尚美さんの発言が話題になっています。

松嶋尚美の「牛乳有害」発言に批判相次ぐ 専門家も「科学的根拠に基づかない」とばっさり  J-CASTニュース 7月22日(水)11時33分配信

 

牛乳が日本人にとって有益なのか?有害なのか? 確かに、有害とする科学的根拠はありませんが、実は、ばっさり否定する根拠もありません。牛乳摂取に関する2つの論文を紹介します。

 

1牛乳摂取と男女別の死亡・骨折リスク:コホート研究 (BMJ 2014349g6015

スウェーデンの女性9万人と、男性10万人を対象とした信頼性の高い大規模研究。

(結論)

・女性の場合、牛乳を多く摂取する人では、死亡・骨折リスクが高い

・男性の場合、牛乳を多く摂取する人では、死亡リスクが高いが、骨折リスクは差がなかった。

・発酵乳製品(ヨーグルト・チーズ)では、牛乳と逆の傾向が見られた。

 

ただし研究者らは、今回の結果だけで日常の牛乳摂取を見直すべきかどうかを判断することはできないとしています。

 

2牛乳・乳製品とメタボリックシンドロームに関する横断的研究 (日本栄養・食糧学会誌2010;63151-159

この論文を元に行われた座談会「牛乳・乳製品摂取とメタボリックシンドローム」メディカル朝日別冊によれば、

日本人初の大規模調査研究

・牛乳・乳製品の摂取が多い人にはメタボリックシンドロームが少ないことが示された。

・女性では、牛乳・乳製品の摂取が多いほど、腹囲、BMI中性脂肪収縮期血圧が低く、HDLコレステロールが高かった。

・男性では、牛乳・乳製品の摂取が多いほど、収縮期血圧拡張期血圧が低かった。

 (問い合わせ先:社団法人日本酪農乳業協会)とのことですが、

 

実は、この研究の対象者は乳業メーカー4企業グループに勤務する従業員とその家族。自記式の郵送アンケート調査で回収率は35.8%。メタボリック健診結果は自己申告。という内容で、臨床研究治験や生物統計学の専門家が原著者に名を連ねながら、この研究から、どうして座談会のような結論が出せるのか、限りなく灰色に近い論文です。

 

いずれにしても、牛乳が有用である確かな根拠がなく、もしかしたら牛乳が有害である可能性も否定できないのが現状ならば、牛乳を摂取しないという選択肢、立場はもっと尊重されるべきです。もし松嶋さんが「私はこのようにしている」という、タレント松嶋尚美さんらしい発言だったとすれば、何ら非難されることのない発言ではないでしょうか。