現役産科医の視点

生命誕生の現場、産科医の視点から

最新、お産事情。帝王切開の方が安い?

◆米国医師会雑誌の2017年1月3日配信記事
「中国における帝王切開率(帝切率)の地域差と傾向 2008~2014」
によると、
・中国の帝切率は2008年の28.8%から、2014年の34.9%に増加した。
・2014年、中国の31州の間で帝切率に4.0%~62.5%もの地域差があった。
・帝切率の全体的な増加傾向にも関わらず、2014年、17の大都市圏のうち14カ所でピーク時よりも4.1~17.5%帝切率が減少した。
・特に帝切率が減少した4つの大都市圏で母体死亡や周産期死亡の増加はなかった。
とのことですが、実は、これには隠れた事実があります。

◆中国人妊婦の話
かつて、中国の方はすぐに「帝王切開にして!」と訴えることが多く、帝王切開を先進的な出産と考えているフシがありましたが、ここ数年、中国の方の出産が増え、印象が変わってきました。
先日も、中国東北地区の大都市圏出身の方が「第2子の出産・産後ケアを日本で」と希望され来院しましたが、前回3600gの子を中国で普通分娩されたとのことで、
「一人目の出産はがんばりましたね。赤ちゃんが大きめと判って、帝王切開を勧められませんでしたか?」と聞くと、
彼女は少し“ムッ?”とした表情になり、
「医者にお金を払って、自然分娩を待ってもらったんです」
と、次のように教えてくれました。
中国でも、安易な帝王切開をしたくないと考える妊婦は増えているのに、医療機関があれこれ理由をつけて、すぐに帝王切開してしまう。幸い、彼女を担当した医師は優しい産科医だったので、希望を聞いて分娩になるまで待ってくれたが、VIP用の分娩室を貸し切るために、追加料金が必要だったとのことでした。

医療事情の悪い田舎の病院や、都市部でもお金がなければ、少しのことで帝王切開されてしまうと、彼女は不満顔になったようです。
産科医として、彼女の気持ちも、医療機関の思いもよくわかります。現在、分娩をしっかり管理しようとすれば、いつになるか判らない分娩のために産科医、助産師の拘束時間も長くなり、帝王切開よりも実質コストのかかった自然分娩になることがあります。
中国人妊婦の中には、お金がかかっても良いから自分が希望する分娩・産後のケアサービスをしてほしいと遠方から来院される方もあります。

今回の配信記事の本質は、中国では経済力があれば、母子のリスクは変わることなく帝王切開率を下げることができるということを示しています。

現在、日本のお産も帝王切開率は上昇中ですが、すでに一部では、昔ながらの自然分娩のためのLDR分娩室に、オプション料金を設定してしている病院もあります。健康保険扱いや生命保険入院特約などもあり、近い将来、「帝王切開の方が安い」ということになるかもしれません。良いことではありませんが……、