現役産科医の視点

生命誕生の現場、産科医の視点から

超少子化に異次元の処方箋はない

少子化問題では、社会学者の発言や対策案などにマスコミが飛びつき、あたかも少子化を防ぐ巧みな方法があるかのような期待を持たせますが、実は、正解などあるわけもなく、学者、有識者らの無責任な発言、主張が放置されています。

歴史上の「富国強兵」や、「産めよ、増やせよ」政策にしても、それで人口が増えたわけではなく、一方、戦後ベビーブームは社会現象ですが、政策で起きたものではありません。

 

NHKスペシャル「私たちのこれから」取材班 「超少子化 異次元の処方箋」

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  第3章 少子化を打開したフランス

  第4章 日本でもできる! 岡山県奈義町

この本に限らず、少子化問題でしばしば引用される岡山県奈義町やフランスにおいて、政策により少子化が解決されているという認識は間違っています。

 

奈義町(6690人)は、平成大合併の際に、住民投票で73.1%が合併参加に反対しました。実は、人口1万人以下の自治体で、平成の大合併の協議に参加しなかった自治体は、合併しない方が住民にとって得であるという、それぞれの理由があります。奈義町の場合、町内に陸上自衛隊の日本原駐屯地があるということです。

もし、奈義町に陸上自衛隊の駐屯地がなかったら、平成の大合併に住民は反対しただろうか? 現在のような政策は可能だっただろうか? さらに、今後30~50年にわたり、現在のような政策の継続は可能だろうか? 

政策が良かった、住民に知恵があったかのように報道しますが、本当は違います。

 

フランスについては、象徴的な記事がありました。

一方、ドイツについては、

  • フランスでは、2010年ピークに出生率は低下基調
  • ドイツではベビーブームで、最近5年間で出生数が2割増加

という内容です。

 

少子化は、結果として重大な社会的問題、国家的問題を引き起こしますが、原因は社会的問題にあるわけではなく、社会的問題に対する福祉政策が、少子化問題への処方箋になると考えるのは浅はかです。

政策を提案し、発言している社会学者や有識者らは、自らの主張、学者生命の維持を果たそうとしているにすぎません。

 

女の一生(新潮文庫) モーパッサン、新庄嘉章訳 より引用

 クイヤール家の娘が最近子供を生んで、結婚式をあげようというところだった。マルタン家の女中は孤児だったが、おなかが大きくなっていた。十五になる近所の小娘も孕んでいた。足のなえたきたならしい貧乏後家で、「馬の糞」とあだ名されているほどにおそろしく不潔な女までが孕んでいた。

ひっきりなしに、まただれだれが孕んだという噂が聞こえてきた。かと思うと、どこかの娘や、嫁に行ってもう母親になっている百姓女や、あるいは一般の尊敬も受けている金持ちの百姓などの浮気話だった。

 

フランスでは、長年の個人主義、多様な価値観を受け入れる素地あります。

イギリスでは、王子が離婚歴のある外国籍の女性との結婚を国を挙げて祝福します。

国民性の異なる国では、その国の特性を考慮した対策が必要です。

日本の人口問題は、地球上で人類が初めて遭遇する危機的状況の一つであり、日本がどのような顛末となるかは興味津々、世界が注目しています。日本が模範とするモデルは存在しないと考えるべきです。

現在、社会的問題に対して行われている政策が、長期的な視点では少子化を助長する可能性も多大にあります。むしろ、生態学的には、適度な社会的な混乱や混沌の状況で出生率は増加します。

(現役産科医の視点として少子化問題への発言 つづく)