現役産科医の視点

生命誕生の現場、産科医の視点から

夫立ち会い出産、知っておきたいこと

サッカー・ワールドカップで、イングランド代表のMFファビアン・デルフ選手が、奥さんの出産に立ち会うために、決勝トーナメントの1回戦を欠場し、帰国したことが話題になりました。かつて、アメリカの大リーグでも、先発ピッチャーが試合の途中で、出産に立ち会うために降板するのを観客が拍手で送り出すシーンありました。

日本でも、夫の立ち会い出産は増えており、一部に、両親学級への参加を義務づける施設もありますが、ほとんどの施設で、立ち会いが可能です。

しかし、先日(727日)のNHK朝ドラ半分、青い」で、ヒロインの出産に立ち会っていた夫が途中で気を失って倒れ、生まれる瞬間は部屋の外で待っていたように、実際、分娩の最中に大きな物音がして、見ると夫が床に倒れており、その介抱に苦労した、というような経験は、何度かあります。

妊婦健診に付き添い、あらかじめ病院や医療スタッフの雰囲気を知る、両親学級に参加して上映される分娩のビデオなどを奥さんや、他のご夫婦と一緒に見ておく、などは役に立ちます.

立ち合いは遠慮したい、血を見るのは苦手などの場合には、無理強いせずに、分娩体位になってからは部屋の外で待機し、生まれてから入ってもらうこともできます。

施設により具体的な決まり事、手順は異なるので、それぞれ確認していただきたいと思います。ここでは、一般的に知っておきたいことについて紹介します。

夫がすること

特別な準備は必要ありませんが、わからないことがあれば、担当の助産師に、今、自分はどんなことをすれば良いのか遠慮なく聞いてみましょう。意外と単純なことをお願いされるかもしれません。

たとえば、妊婦に水分や食事の摂取を促す、腰をさする、テニスボールを妊婦のおしりに当てて押す、妊婦を背中から抱える、妊婦の足を抱え上げる、妊婦の頭の後ろに手を回して支えるなど、分娩の進行具合によって、指示は変化します。仕事とは違って、分娩経過にはスケジュールやマニュアルはありませんから、「さっきの指示と違う」とか「助産師によって言うことが違う」とか考えてはいけません。

アスリートを応援するような「がんばれ!」の連呼はNGです。分娩中の妊婦は、皆、これ以上ないくらい頑張っています。赤ちゃんが生まれてくるまでは、冷静なサポーターに徹しましょう。

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手を握り、頭を支える夫

夫がしてはいけないこと、遠慮すべきこと

分娩室・LDRは清潔区域、赤ちゃんを子宮内から初めて外界に迎える場所です。

1.飲酒状態、薬物服用

飲酒状態の方は、立ち会いを遠慮しましょう。睡眠薬や精神安定剤などを服用中の方も、立ち会いできないことがあります。

2.喫煙

分娩が長時間になると、1~2時間ごとに外出される方がいます。たいてい駐車場の車などに戻って一服されており、戻ってきたら臭いでわかります。口には出しませんが、助産師やスタッフには嫌がられています。妊婦、新生児にもよくありません。これを機会に禁煙しましょう。

3.不潔な服装

スーツ・ネクタイ、仕事着は不潔と考えましょう。その服装で新生児を抱いたり、直接触ったりしません。助産師に進行具合を聞いて、時間に余裕があれば、自宅でシャワーをして、洗い立てのカジュアルな服装に着替えてから立ち会います。着替えを用意しておき、そこで着替えてもかまいません。手術室で帝王切開に立ち会う場合には、無菌室に入る時のような使い捨てのキャップ、ガウンを使用します。

用意すること

分娩が長時間になった場合、外出して食事はできますが、自分用の飲料水、軽食は用意しておきましょう。数日にわたる分娩では、妊婦だけではなく、付き添う家族も疲れてイライラしてしまいます。その場合、待合室やLDRのソファーなど、許可された場所での仮眠を勧められる事がありますので、自分用の洗面用具があると便利です。

カメラ・ビデオ撮影がOKかどうかは施設や状況によりますので、確認して下さい。いざという時、操作ができない、電池切れなどで慌てて、せっかくの立ち合いが台無しになる方がおられます。あらかじめ準備しておきましょう。最近は、使い慣れたスマホのカメラ機能の方が便利かもしれません。

赤ちゃんはフラッシュ撮影できません。必ず発光禁止にしておいてください。(理由は別の機会に詳しく説明します)

立ち会い分娩の落とし穴

立ち会い出産を経験した夫が、産後セックスレス、勃起不全に!?

出産が難産や、会陰切開、吸引分娩などの場合に、心的なショックを受けて、産後のセックスでそのシーンがフラッシュバックし、肝心の時に萎えてしまうという方が、少数ですがおられます。たとえば「陣痛時の表情」「会陰を切開する時の音」「助産師や医師が浴びた羊水や血」などが頭をよぎって、オナニーでは勃起・射精ができるのに、奥さんとのセックスでは挿入ができず、産後セックスレスの原因になります。

その人の性格、人種・国民性によって傾向は異なる可能性もありますが、実は、ヒトの生態として、出産の立ち会いが本当に良いことなのかは、わかっていません。

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事前に想定できれば、心因性トラウマを避けられるかも