現役医療者の視点

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口噛み酒は、なぜ処女が噛んだ米で作られたのか?

自然の環境でも条件が良ければ、果物や穀類が発酵してお酒になるので、太古からお酒はあったと考えられますが、人間が造るお酒としては、ブドウなどの果実を集めて保存し自然発酵させてできる果実酒、穀類を噛んで造る口噛み酒が始まりとされています。 

 口噛み酒(口神酒)とは?

口噛み酒は、米、イモ、トウモロコシなどの穀類を口の中で噛むと、穀類のデンプン質が唾液中のアミラーゼで分解されて糖質となり、それを吐き出し溜めておくと、自然の酵母が働いて発酵し出来たものです。

穀類を主食とする世界中の先住民族にも伝わっており、文明発祥以前から経験的に出来たものでしょう。おそらく、稲作伝来の前から口噛み酒は存在しており、日本酒のような麹を利用して造るお酒が、後から集団稲作文明として伝わったと考えられます。

 

口噛み酒は、多くの地域において

「処女が穀類を噛んで……」とか

「神事として巫女さんが米を噛んで……」など、

若い未婚の女性が「口噛み」をして造ったと伝わっています。

 口噛み酒と口内細菌

穀類を「口噛み」すると、唾液中のアミラーゼが働きますが、同時に口腔内の常在菌群を練り込む事になります。生まれた時に、母親から正常な常在菌群を受け継いで以来、大病を患うことなく育った若い女性の口内には、最も混ざり気のない健康な細菌集団が存在します。

 

美味しいお酒の条件として「雑味がない」「雑味にあまり癖がない」ことがあります。雑味は、お酒の成分に混ざり気、特に不必要にアミノ酸の種類が多いことが影響します。このアミノ酸は微生物によって造られますから、細菌の種類が不必要に多いと、不必要にアミノ酸が増え、出来たお酒は雑味が増してまずくなります。

 

雑味には好みもありますが、一般には雑味が増すとまずくなります。

・調味料を無秩序に混ぜると必ずまずくなる。

・絵の具の色を無秩序に混ぜると必ず汚い色になる。

・良い香りでも無秩序に混ぜると必ずくさい臭いなる。

 なぜ、口噛み酒は、処女が噛んだ米で作られたのか?

おそらく、若い未婚女性が口噛みしたお酒が、雑味がなく一番旨かった、

ということだと思います。

 

「処女のおならは臭くない」

「健康な赤ちゃんのうんちは食べられる」

「草食動物の糞は臭くない」

「健康なぬか床の臭いは良いにおい」

などと、通ずる点があります。

 

縄文時代、集落を形成した源は豊かな自然から得られる食物などの恵みと、子孫の繁栄です。集落同士の戦いがなく平和で豊かな期間においては、人々の楽しみは食、音楽、踊り、お酒だったことでしょう。体力だけなら男が勝っていても、美味しい口噛み酒を造り、歌や踊りが上手な女性を中心に集落がまとまり、やがて神に仕える巫女が成立する端緒になったと考えられます。出産も身近で行われており、女性がより尊重された時代と考えられます。

 

もしかしたら、邪馬台国の卑弥呼は、若い頃、声が魅力的で踊りが上手く、「口噛み」して出来たお酒が旨かったのかもしれません。