全国労働組合総連合(全労連)の女性部がまとめた調査結果が、ニュース配信されました。
(弁護士ドットコム)
「働く女性は流産しやすい?」と思わせる内容の記事ですが、実は、そうではありません。
◆流産の実情
妊娠検査薬が市販されるようになり、以前より早く産科施設を受診される方が増えました。おかげで禁酒禁煙、服用薬の注意、流産・子宮外妊娠などの異常妊娠の早期診断など多くのメリットがありますが、一方、以前なら生理不順と区別がつかなかったような、ごく妊娠初期の流産も、はっきり診断されるようになりました。現在、妊娠検査が陽性に出て産科施設を受診した人のうち、約15%が流産されます。
もし仮に、流産せずに出産できた残りの85%の人が、次の妊娠で15%が流産すれば、さらに12.75%(0.85×0.15×100)、つまり、単純計算では2回の妊娠で、27.75(15+12.75)%の人が流産を経験することになります。
実際には、1度しか妊娠しなかった人や、流産しやすい体質、流産しにくい体質の人など、正確な母集団の設定は困難なのですが、経験的に、妊娠したことのある女性の約4人に1人が流産を経験しています。 (過去の妊娠歴記録から)
これは専業主婦、自営業、中小企業勤務、また、使用人を抱えたお姫様であっても同じです。つまり、今回のアンケート結果は「働く女性も流産を経験する割合には差がない」ということを示しています。
◆妊娠と仕事
よく「妊娠中、どの程度仕事をして良いですか?」と質問を受けますが、例外的なケースを除いて、「日々の仕事は、これまで通りで良いですよ」と答えています。今回の報道に限らず、もし「働く女性は流産しやすい」という誤ったメッセージが広まると、女性の社会進出にもブレーキになりかねません。
自営業で休日がない、非正規で複数掛け持ちなど、健康的な生活を維持できないような仕事は問題です。
重要な事は、働く女性に限らず、妊娠経過には個人差があり、ふだんは経験しないような身体症状を感じることも多くなります。妊婦が不安にならないように、生活や職場の環境、雇用条件の柔軟な対応が求められています。
◆「マタニティ・ワークプラン」のすすめ
現在、多くの産科施設では、妊婦さんの「バースプラン」を参考に妊娠、出産、育児をお世話します。
(夫立会希望、会陰切開をしないでほしい、母乳だけで育てたいなど、全てかなえられるわけではありませんが)
同様に、働く女性が妊娠したら個別の実情に合わせて、本人、事業主、産科担当医が、妊娠中の仕事について情報を共有することが大事です。この際に、有用なのが次の連絡カードです。
厚生労働省 母性健康管理指導事項連絡カード
これまでは、何か問題がある時にだけ、診断書代わりとして使用されることが多かったのですが、妊娠経過が順調な人も含めて、母子手帳のように記入して、本人の意向を医師と相談の上、職場に伝えるカードとして利用します。
(「マタニティ・ワークプラン」は著者の造語です)