2020年2月、経済評論家の森永卓郎さんは、取り返しのつかない、大きな過ちを2つ犯しました。
2020年2月17日、あるラジオ番組で、
森永「私は、今までの人生で、株を売ったことは、一度も無かったんですが、あのぉ、株主優待のを残して、先週、全部売りました。(今の株価は)おかしい、どう考えてもおかしい」
番組ホスト「……、合いの手発言……」
森永「(株価)絶対、落ちると思う」、「私が売るのは、人生初です」
この日、多くの人が不安な気持ちを抱きながらも、まだ日経平均株価が24000円前後、アメリカのダウ平均株価が29000ドル台の過去最高域を維持していましたが、その1週間後、
2月24日にアメリカ、日本では休日明けの25日、株価急落が始まりました。
森永卓郎さんの発言が、暴落の引き金になったとは、証明はできませんが、株価のような不確実性現象においては、バタフライ効果が発生するとされています。
「北京で蝶が羽ばたくと、それを引き金にして、ニューヨークで嵐が起こる」と例えられる現象ですが、
この日の放送後に、リスナーの中で、株トレーダーのような人ではない、普段はアクティブに売り買いしない普通の人が、一定の数、手持ち株を売ったと考えられ、引き金になった可能性は否定できません。
日常の売買を左右する大手の取引ではなく、額は少なくても、普段は想定できないような、これまでとは違った動き(variant)が、引き金になりやすい。
加えて、常識的な経済評論家、経済アナリストは、自身の売買については公共の場で、発言しないものです。もともと、いつかは下がるだろうという、タイミングを見計らっていたとはいえ、経済評論家の肩書きをもつ人が、決して発信してはいけない内容だったと思います。
その後、株価暴落後の、あるテレビ番組で、
森永「私は、日経平均が24000円の時に、手持ちの株を全て売りました。まだまだ、下がると思います」
他の出演者「では、森永さん、いくらまで下がると思います?」
森永「私は、日経平均7000円まで下がると思っています」
他の出演者「えっ、7000円ですか?」
森永「はい、私は、その時点で、買い戻せば、儲かる……」
世間が、コロナ禍の対応で苦労する中、経済評論家としては、脇の甘い発言です。
新型コロナウイルス感染に関する発言。
森永さんは、コメンテーターとして、多くのテレビ番組に出演して、PCR検査をもっとするべきだという立場で、およそ次のような発言を繰り返していました。
あるテレビ番組で、
森永「新型コロナ、どうしてPCR検査をもっとしないんだ。と私は強く言いたい。韓国やイタリアのように、どんどん検査して、有病率、発病率、致死率をはっきりさせるべきだ、1000人もPCR検査をしたら統計的に95%の確率で、正しい答えがわかる。どうしてサンプル検査を行わないのか?」
別番組で、
森永「ランダム化した1000人のサンプル調査、もしよかったら、私がタダで引き受けてもいい……」
アイドルの人気投票と、命にかかわる疫学分析を、同レベルに考えているのでしょうか? ランダム化、サンプル評価がいかに難しいか、森永さんは知っている上で、確信犯的に「どうせ、自分にその仕事は回ってこないから……」という無責任な発言です。
クラスター発生している状況は、まだ発生に濃淡がある状態です。
中学校の理科、水に塩を溶かして濃度を調べる際には、十分にかき混ぜないで、溶けきっていないと、場所によって濃度が異なるので、一部をサンプリングしても正しい濃度はわからない。
現在は、統計的に正しい答えが得られる状況ではありません。多くの要素が絡んで、統計的に正確な予測値を出すことができないから、いつ、どこでアウトブレイク(爆発的発生)するか判らない。
でも、できれば爆発的発生は起きないでほしい! と現場の多くの人が頑張っている、それが、今の日本の現状です。
このような状況で、テレビ・ラジオで、株をタイミングよく売った話をする森永さん。かつて橋下さんが、森永さんを「馬鹿コメンテーター」と呼びましたが、今回は、致命的な過ちを犯したのではないか、と思います。