新型コロナウイルス感染の国内発生が確認された頃から、市販風邪薬のテレビCMが少なくなりました。例年と異なり、市販風邪薬で発熱、咳、鼻水などの諸症状を緩和させ、仕事などを頑張る人は減り、食事、睡眠、免疫力に気を配る人が増えています。
今シーズン、秋口から早期に流行したインフルエンザが、年明けに流行しないのは、咳エチケットや手指アルコール消毒などのおかげとも言われており、また、医療機関の受診も、電話で相談・予約する人が増えて、安易に、直接受診する人は減っています。
新型コロナウイルス感染は終息の気配がなく、まだ安心できませんが、この感染災害は、日本の医療を見直す良いチャンスかもしれません。
新型コロナウイルス感染症の発生源となった武漢市は、人口1千万人を超える大都市です。おそらく年末に感染が始まり、1月半ばにウイルス感染による重症肺炎と認識されるまでは、適切な衛生管理をしていない人も多く、当初は、諸症状を緩和する風邪薬、漢方薬や、抗生剤投与が行われたと考えられます。中には、「効き目が良い」と日本で爆買いしてきた市販医薬品に頼った人もいたでしょう。発熱、倦怠感などの症状で、蛇やスッポンの生き血、野生動物の生卵の入ったお酒などの民間療法を試した人もいたはずです。
それらの効果は、咳エチケット、手指消毒や、適切な食事、睡眠、休養には及ばないと考えられ、むしろ、重症化を見逃し、蔓延を許す原因となった可能性もあります。
・妊婦の風邪症状
妊婦健診の際に、ちょっとした咳や鼻水で、
「私、風邪をこじらせやすいので早めに風邪薬ください」とか、
「抗生物質を処方してください」
などと希望される妊婦さんがおられます。今でも、求められるまま、ほとんど診察することなく安易に、風邪薬(PL顆粒など)や漢方薬、抗生剤を処方する産科医がいるのは困ったものですが、おそらくは衛生管理や療養について説明するよりも、処方箋を書くのが一番簡単だからです。
ところが最近、風邪症状がある妊婦さんに、
「普通の風邪を治すクスリは無いのを知ってますか?」と聞くと、
「はい、『風邪に効く』ってCMは嘘ですよね、100%安全なクスリは無いし、クスリはいりません」
と応える人もおられて、療養について説明した上で、
「必要なら、休業のための診断書を書きますよ」と話すと、納得してもらえることも増えてきました。
週刊東洋経済(2020/2/15)の第1特集「信じてはいけないクスリ医療」では、
医者から言われるがままに飲んでいた薬、病気を治すためだと思っていた治療や検査 。それらが実は健康をむしばんでいるかもしれない。身近な医療を疑い、病院の裏側に迫る。
日本のクスリ医療の問題点が紹介されています。日本の健康保険制度の維持のためにも、医師、薬剤師、患者ともに意識を変える必要があります。
次回、クスリで治るけれども、クスリに頼ると、結局、治らない病気を紹介します