胎児は妊娠7ヶ月頃から、しゃっくりをするようになります。普通の胎動とは異なり、胎児がピクッ、ピクッと繰り返し動くので、心配になるかもしれませんが、病気ではありません。
私たち誰もが経験するしゃっくりですが、まれな例外を除いて治療の必要はないので、あまり医学的に研究されておらず、医師監修の記事にも、間違った内容が記載されています。
- 胎児しゃっくり (超音波動画)
- 新生児しゃっくり (誕生直後)
- しゃっくり運動とは?
- 胎児しゃっくりは、胎動カウントにカウントしない理由
胎児しゃっくり(超音波動画)
胎児しゃっくりの超音波動画です。胎児の縦断面で、画面右が胎児の上、左が下。右に肋骨の陰が見える胸部、中央で左右に動く横隔膜、左に腹部が見えます。横隔膜が繰り返しけいれん様に収縮します。大人のしゃっくりと同じ生理現象です。
ネット上では、妊娠初期の超音波検査で、妊娠9週~12週ごろに見られる胎児の全身動作を、胎児しゃっくりとしている記事がありますが、それは運動神経が未熟な時期に、骨格筋の制御が不十分でおこる動作で、妊娠5ヶ月以降には見られなくなり、しゃっくりではありません。妊娠中期以降に母親が感じる胎児しゃっくり運動とは全く別のメカニズムです。
新生児のしゃくり(出生直後)
しゃっくり運動とは?
しゃっくりは、横隔膜のけいれん様収縮と声帯開閉の連動がうまく働かず起こります。病気ではありませんが、大人よりも新生児、乳児で起きやすく、また、よく起こす子と起こさない子がいて、個人差があります。
妊娠中の経産婦さんが、一人目の時は感じなかったのに、二人目はよくしゃっくりする、逆に、一人目はしゃっくりしたのに、二人目はしない、ということがよくあります。
私たちは、胸郭を広げる胸式呼吸と、横隔膜を上下させる腹式呼吸を、無意識のうちに組み合わせ、状況に応じた適切な呼吸を行っています。
運動時は、素早い換気のために胸式呼吸で胸を上下させますが、そのためには大きなエネルギーが必要です。安静時には、より少ないエネルギーですむ横隔膜を使い、ゆっくりとした腹式呼吸を行います。
それらを無意識でコントロールしているのは呼吸中枢と自律神経ですが、そのメカニズムが適切に機能しなかったり、まだ発育途中にあると、しゃっくりが起きます。横隔膜が収縮し肺を広げるタイミングに合わせて、声帯は必要十分に開いている必要があります。
妊娠8ヶ月以降、胎児は約20分おきに睡眠と覚醒のサイクルを繰り返すようになります。経験的には、胎児しゃっくり運動は睡眠の終わりから覚醒の始めに起こりやすく、寝起きの子供が寝ぼけるように、覚醒直前の呼吸中枢が寝ぼけていると解釈することもできます。
胎児しゃっくりは、胎動カウントにカウントしない
妊娠28週以降、赤ちゃんは覚醒期に手足の屈伸、全身の回転運動などを行うようになり、そのような胎動では、同時に胎児の心拍数が一時的に増加します。覚醒期に四肢を動かすのは、胎児が元気なサインです。(自律神経による心拍数のコントロールが正しく働いている)
胎動カウントでは、最初はどんな胎動をカウントするのか分からなくても、数日すると、胎動カウントのタイミングが、自然に胎児の覚醒期に一致するようになり、大体20分(10~30分程度の幅があります)の間に、10回の胎動がカウントできるようになります。
一方、胎児しゃっくりは、睡眠期でも起こり、心拍数が増加する反応は少なく、大脳、運動神経が働かない異常な胎児でも呼吸運動、しゃっくり運動はするので、胎児の元気のサインとはいえません。
胎児しゃっくり運動を感じても、それ以外に普通の胎動(ポコポコ蹴る、ぐるぐる回るなど)をカウントできれば、胎児は元気と判定できます。
ということで、胎動カウントでは、胎児しゃっくりはカウントしません。