現役医療者の視点

現役医療者の視点  AllAboutガイド

新型コロナ禍の妊娠・育児 頑張るお母さんたち

コロナ禍の中、産後うつが増えている! という報道が続き、中には「産後の4人に1人が産後うつ」という記事までありますが、実態は違う印象があります。コロナ禍の中でも、ほとんどのお母さんは意外と元気で、逆境に負けていません。 (コロナ禍で、産後うつ…

妊娠中、授乳中の新型コロナワクチンは?

ようやく日本でも、新型コロナワクチン接種が始まります。 国内では医療関係者への先行接種からですが、妊娠中、授乳中の人はどうしたらよいか、問い合わせが増えています。 (2021年2月10日時点の情報提供です) 日本国内では、妊娠中の感染症例数も少なく…

胎児と新生児のしゃっくり(動画)

胎児は妊娠7ヶ月頃から、しゃっくりをするようになります。普通の胎動とは異なり、胎児がピクッ、ピクッと繰り返し動くので、心配になるかもしれませんが、病気ではありません。 私たち誰もが経験するしゃっくりですが、まれな例外を除いて治療の必要はない…

新型コロナ、妊娠中に母親から胎児へ感染

妊娠中、母親が新型コロナに感染したら胎児も感染する? 妊娠中の母親から胎児へ、新型コロナウイルス感染が確認されています。 (リンク先は興味のある方だけお読みください) 妊娠中の方は不安になりますが、母子感染の可能性はあるものの、頻度はまれで、…

新型コロナでロキソニンやイブプロフェンは使わない方が良い

「結局、新型コロナに罹ったらロキソニンやイブプロフェンは飲まない方が良いのか」 という記事が紹介されましたが、これを読んでも最後まで、はっきりとした結論は示されていません。 (リンク先は興味のある方だけお読みください) 記事の中で、 「新型コ…

もらい乳・輸血の昔話と、C型肝炎ウイルスの発見

2020年のノーベル医学生理学賞となったC型肝炎ウイルスの発見や、新型コロナ報道で有名になったPCR検査法の発明は、1980年代のことです。当時、血液や母乳を介して感染するウイルスや、発がんウイルスのメカニズムが次々と明らかとなり、医療のみならず、日…

妊娠中、ちゃんとしたローストビーフは食べられる

妊娠中のローストビーフ NHKドラマ「デイジー・ラック」出演の佐々木希さんのインスタグラムに、ドラマの幼なじみ役4人でローストビーフを食べた時の様子がアップされていました。 この写真を見て、SNSのコメントや医療現場を知らない科学ジャーナリスト…

オーバーシュートとアウトブレイク 視点の違い

日本の新型コロナ感染報道では、感染患者数が指数関数的に急速増加する、爆発的な感染拡大のことを「オーバーシュート」と表現していますが、本来の英語としては、アウトブレイクが適しています。 オーバーシュートとアウトブレイクは、本質的に視点が違いま…

オーバーシュートは誤用英語(新型コロナウイルス感染)

現在、日本では、「新型コロナウイルス感染の爆発的増加」のことを、オーバーシュート(overshoot)と表現していますが、これは誤用英語です。(一種の和製英語) 本来は、アウトブレイク(outbreak)という表現が正しい。 意図的にパニックにつながるようなア…

経済評論家 森永卓郎さんが犯した2つの過ち

2020年2月、経済評論家の森永卓郎さんは、取り返しのつかない、大きな過ちを2つ犯しました。 経済評論家 森永卓郎さん 2020年2月17日、あるラジオ番組で、 森永「私は、今までの人生で、株を売ったことは、一度も無かったんですが、あのぉ、株主優待のを残し…

新型コロナ肺炎にイブプロフェンは避けて! ではロキソニンは?

フランスのオリビエ・ベラン保健相が、イブプロフェンは新型コロナウイルス感染症を悪化させる可能性があると指摘、もし解熱剤が必要な場合であっても、イブプロフェンは避けて、アセトアミノフェン(商品名:コカール、カロナール、タイレノール)の服用を…

新型コロナウイルス感染症と妊娠、授乳

連日、新型コロナウイルス感染の報道が続いています。情報は限定的ですが、今のところ、風疹、ジカ熱のような胎児異常、胎児奇形を引き起こす感染症ではなさそうです。 最も信頼できる情報源であるCDC(アメリカ疾病予防管理センター)のサイトから、妊娠、…

マスクの再利用 リサイクル方法と注意点

私は、この時期、花粉症対策でマスクをしますが、電車通勤の行き帰り、病院内一般業務、手術中、感染領域の業務など、1日数回~10数回、マスクを交換します。 全てが新品ではなく、時と場所により、マスクを再利用しています。 (自分が使ったマスクをリサイ…

新型コロナウイルス感染で変わる日本の医療

新型コロナウイルス感染の国内発生が確認された頃から、市販風邪薬のテレビCMが少なくなりました。例年と異なり、市販風邪薬で発熱、咳、鼻水などの諸症状を緩和させ、仕事などを頑張る人は減り、食事、睡眠、免疫力に気を配る人が増えています。 今シーズン…

「働き方改革」は医療改革のチャンス

2019年4月から始まった「働き方改革」は、戦後70年以上続いた日本の雇用システムを根本から変える改革です。 医療分野では、医師の長時間労働、過重労働の改善、つまり、医師のための改革として報道されることが多く、一般の人は関係がないと思われるかもし…

夫立ち会い出産、知っておきたいこと

サッカー・ワールドカップで、イングランド代表のMFファビアン・デルフ選手が、奥さんの出産に立ち会うために、決勝トーナメントの1回戦を欠場し、帰国したことが話題になりました。かつて、アメリカの大リーグでも、先発ピッチャーが試合の途中で、出産に立…

超少子化に異次元の処方箋はない

少子化問題では、社会学者の発言や対策案などにマスコミが飛びつき、あたかも少子化を防ぐ巧みな方法があるかのような期待を持たせますが、実は、正解などあるわけもなく、学者、有識者らの無責任な発言、主張が放置されています。 歴史上の「富国強兵」や、…

小学校の頃の性教育が草食男子を作っている?

ラジオ番組の中で、コメディアンで俳優のきたろうさんが、興味深い仮説を紹介していました。いつものように、番組ホスト、大竹まことさんが突っ込みを入れ、よき理解者であるアシスタントの壇蜜さんが、きたろうさんをサポートするという展開でしたが、きた…

妊娠中のカフェイン、コーヒー2杯はOK

愛媛大学 プレスリリース 妊娠中のカフェイン摂取は、子供にとって効用があるかもしれないという発表です。妊娠中のカフェイン摂取については、過剰に神経質になっている方がおられますが、適切な量であれば心配はいりません。ストレスを抱えた妊婦には、む…

ハンセン病と胎児標本問題

ハンセン病問題は、強制隔離、強制不妊手術、強制堕胎、胎児標本など、信じがたいような非人道的な負の歴史と考えられていますが、実は、当時の人は特に疑問を持たず、当然のこととして受け入れていた国の施策でした。 2016年、WHO(世界保健機関)は「ハ…

胎動カウントの実際

胎動カウントは、グラフにすると変化に気がつきやすくなります。 10回胎動カウントの正常例 はじめは、どんな胎動を1回にカウントするのか迷うかもしれませんが、実際にやってみると難しいことではありません。 目安として、30分以内に胎動が10回と思って始…

胎児標本問題の真実(なぜ胎児の遺体が残った)

産婦人科の跡地に15体の胎児標本が放置されていたと報道されました。 産婦人科跡地で胎児の遺体15体 NHK鹿児島 2018年02月05日 19時06分 去年11月、鹿児島市松原町で廃業した「鳥丸産婦人科」の建物の解体中に、瓶の中にホルマリンで漬けられた胎児15体が見…

胎動カウントの勧め

分娩予定日が近づき、期待と不安が高まる時期に、お腹の赤ちゃんの心臓が突然止まる、つまり、赤ちゃんが突然亡くなることは、妊婦1000人のうち1~2人の率で起こります。 テレビドラマ「コウノドリ2017」第5話でも、妊娠中の胎児突然死(子宮内胎児死亡)の…

ドラマ「コウノドリ2017」 安全な無痛分娩・心配なこと

「コウノドリ2017」は、産科病院に勤務する私たちにも楽しみな番組です。とてもリアリティのある医療ドラマですが、実は心配なことも……、現役産科医からコメントです。 ・第1話 「聴覚障害者の出産」 本当の苦労 ・第3話 「無痛分娩」 安全な無痛分娩の条…

バースプランの実際

バースプランの作成 正常出産においては、お産をする本人の性格や希望をふまえて、妊娠中から準備をすることで、より安心で満足できる出産を迎えることができます。WHO「正常出産のケア 実施ガイド」においても、妊娠のリスクを医学的に評価した上で、どこで…

正常出産のケア:実施ガイド

WHOが1996年に示した「正常出産のケア」実施ガイドは、多くのエビデンスから十分に検討された内容で、基本的には、20年経った現在も適応していると思います。WHOのサイトからPDF文書でダウンロードできますが、翻訳してみました。 再生医療や新薬、不妊治療…

無痛分娩の恩恵とリスク(メリット、デメリット)

アメリカ妊娠協会による無痛分娩に関する解説を翻訳しました。 一般の妊婦向けの文書ですが、内容は専門的で詳しく記載されています。アメリカでは、妊婦本人が自ら勉強した上で、無痛分娩を選択しているようです。日本では、無痛分娩の良い面の宣伝が多く、…

無痛分娩は日本で普及しない

最近、無痛分娩による医療事故の報道が続き、現役産科医としては、大変残念な思いです。確かに無痛分娩を希望される方は増えていますが、実はこれからも、日本で正常分娩における無痛分娩が普及することはありません。(どうして? と思うかもしれませんが………

小股の切れ上がった、毛深い "いい女"

大学や自治体主催のミスコンテストが中止になり、女性を審査するような言動には厳しい時代ですが、ヒト生態学的には、”いい女”に男が群がり、その群がった男の中から、女が男を選んで子孫を残すというのが、平和な時代のオスとメスの自然で理想的な姿です。 …

アンダーヘアを処理する人は性病になりやすい

BBC Newsで、アンダーヘアを定期的にトリミングや全除去している人は、性感染症の危険性が高くなると報道されました。 元になったのは次の研究論文です。 「Correlation between pubic hair grooming and STIs」BMJ Journals 2016 Dec 05 この信頼性の高い医…

「卒乳」と「断乳」 本当は深い問題

2002年、母子手帳の断乳に関する記載が削除され、「断乳」という言葉は過去のものになりつつあります。しかし、産後の職場復帰や保育所問題も絡んで、悩ましい事情をかかえた母親に、適切な計画的卒乳(断乳)を指導できないのでは母乳の専門家と言えません…

最新、お産事情。帝王切開の方が安い?

◆米国医師会雑誌の2017年1月3日配信記事「中国における帝王切開率(帝切率)の地域差と傾向 2008~2014」によると、・中国の帝切率は2008年の28.8%から、2014年の34.9%に増加した。・2014年、中国の31州の間で帝切率に4.0%~62.5%もの地域差があった。・…

「地中海料理ピラミッド」と「食事バランスガイド」

「地中海料理ピラミッド」は、バランスのとれた健康食として、栄養学・医学において、世界的に有名です。一方の、「食事バランスガイド」は日本の厚労省・農水省によるもので、一見似ていますが、食に対する考え方が根本的に違います。 【地中海料理ピラミッ…

帝王切開の「帝王」の本当の由来

帝王切開術の「帝王」(日本:帝王、独:Kaiser=カイザー、米:Cesarean=セサリアン)の言葉の由来については、ローマ皇帝ジュリアス・シーザー(カエサル)のエピソードからとか、ドイツ語に翻訳するときの誤訳とか、さまざまな説があります。しかし、これ…

健康に良い食事「地中海料理」と「和食」の真実

「世界中で、一番、健康に良い食事は?」と聞かれると、日本人の多くは、「そりゃ、和食だろ。世界無形文化遺産にも登録されて、まちがいない」と答えるかもしれません。ところが実は、日本以外の世界標準の栄養学、医学の答えは「地中海料理」です。地中海…

食の考察 「サプリメントとがん」

生活習慣と”がん”の予防について、世界がん研究基金から「食物、栄養、身体活動とがん予防の要約」の勧告が出されています。その勧告8では、 ◆食事のサプリメントについて「サプリメントに頼らず、食事のみから必要な栄養をとること」 ◆行政に対する公衆衛生…

食の考察 「葉酸」

葉酸は、乳酸菌の増殖を促す物質として、ほうれん草の葉から発見されたビタミンです。遺伝子DNAの複製やアミノ酸の合成を効率よく行うための補酵素として働き、胎児発生期やガンなど細胞増殖が盛んな組織で需要が増えます。 この葉酸を妊娠前~妊娠初期に摂…

大河ドラマ「真田丸」に秘められた作者 三谷幸喜の想い

NHK大河ドラマ「真田丸」 第36回「勝負」の関ヶ原の戦いが話題です。 大河ドラマの関ヶ原の戦いらしい、大掛かりな合戦シーンかと思いきや、宴席に現れた佐助(藤井隆)の報告だけで済ませてしまう潔さ。本能寺の変の大胆な省略にも驚きましたが、当時の情報…

妊娠中の果物摂取が、子供の知能を向上させる?

Yahoo!ニュースで「妊娠中の果物摂取が、子供の知能を向上させる」 と紹介され、賢い子供を産みたい母親らの関心を引いています。さっそく、外来で「あれは本当ですか?」とコメントを求める方も……。 元記事は、8月30日のウォール・ストリート・ジャーナル(…

マタニティー・ワークプラン 働く女性と妊娠

◆なぜ、マタニティー・ワークプランが必要か? ・妊婦健診の特性 通常の診察では、症状(主訴)があり、それを元に診察や検査を行い、診断や治療方針が決まりますが、妊婦健診では、母児が元気な事を確認するのが目的なので、普通は、特別な診断や治療などは…

働く女性は流産しやすい? 働く女性と妊娠

全国労働組合総連合(全労連)の女性部がまとめた調査結果が、ニュース配信されました。 www.bengo4.com (弁護士ドットコム) 「働く女性は流産しやすい?」と思わせる内容の記事ですが、実は、そうではありません。 ◆流産の実情 妊娠検査薬が市販されるよ…

乙武洋匡さんの先天性障害と胎児超音波診断

最近話題の乙武さんには、自らの著書「五体不満足」にあるように、先天性四肢切断という障害があります。このような生まれつきの障害(先天異常)は、大きく2つに分類されます。 | 精子と卵子が受精した段階で決定する、染色体や遺伝子の異常による先天異常…

優生保護法による強制的不妊手術の実態

国連女性差別撤廃委員会が、加盟国の女性差別の現状や、差別解消の進捗状況に関する定期的なレポートの中で、2016年2月、日本政府への質問として「(過去に日本で行われていた)障害のある女性への強制的不妊手術の被害者に対する補償」について情報の提供を…

双子の不思議 背が高い女性は双子を妊娠しやすい?

女優の杏さんが双子の妊娠を発表されました。所属事務所のFaxによると、 「……、双子だということも分かり、この場合安定期と特に言える時期がございません。しばらくの間、静かに見守って頂ければ幸いです」とのことです。 「妊娠はおめでた」とはいえ、双子…

「胎教」 その3

◆「胎教」を考える時に知っておきたい事 ・胎児の発育 視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感は、目、耳、鼻、舌、皮膚の各器官により身体外の情報を得る手段です。健常な成人には当たり前の機能ですが、実は、生命が長い歴史の中で獲得した貴重な能力です。 …

「胎教」 その2

◆「胎教に悪い」と「胎教に良い?」の大きな違い。 本来、「胎教」という言葉は「○○は胎教に悪い」、「そんなことをすると胎教によくない」など、妊婦が精神的な影響を受けないように願う配慮として使われてきました。 広辞苑では、 「妊婦が精神的な安定や…

「胎教」、最も大切な事は何か?

胎教(広辞苑第六版) 「妊婦が精神的な安定や修養につとめて胎児によい影響を与えようとすること」 優秀な子孫を授かりたいというのは生物学的に正しい本能ですが、「胎教」となると、子供を賢く育てたい親の気持ちにつけ入るような、怪しいイメージを持つ…

口噛み酒は、なぜ処女が噛んだ米で作られたのか?

自然の環境でも条件が良ければ、果物や穀類が発酵してお酒になるので、太古からお酒はあったと考えられますが、人間が造るお酒としては、ブドウなどの果実を集めて保存し自然発酵させてできる果実酒、穀類を噛んで造る口噛み酒が始まりとされています。 口噛…

酔ってエッチした時に出来た子供は将来、糖尿病になる?

「受胎前後に母親がアルコールを摂取していると、生まれた子供は将来、糖尿病になりやすい」という研究が話題です。これは米国実験生物学連合雑誌(2015年7月号)に掲載されたネズミの実験の研究報告によるものです。 妊娠が判ってからは禁酒をしていても、…

松嶋尚美さん「牛乳有害」発言、問題の真実

テレビ番組での松嶋尚美さんの発言が話題になっています。 松嶋尚美の「牛乳有害」発言に批判相次ぐ 専門家も「科学的根拠に基づかない」とばっさり J-CASTニュース 7月22日(水)11時33分配信 牛乳が日本人にとって有益なのか?有害なのか? 確かに、有害とす…