現役医療者の視点

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妊娠中、授乳中の新型コロナワクチンは?

ようやく日本でも、新型コロナワクチン接種が始まります。

国内では医療関係者への先行接種からですが、妊娠中、授乳中の人はどうしたらよいか、問い合わせが増えています。

 2021210日時点の情報提供です)

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日本国内では、妊娠中の感染症例数も少なく、一定の方針を出せる状況ではありませんが、アメリカ、イギリスでは、妊娠中の医療従事者・エッセンシャルワーカーには、自己判断の上、接種希望者には接種を勧めるとしています。

数多くの症例報告があるアメリカ、イギリスの方針から紹介します。(アメリカ疾病予防センター、イギリスRCOGのサイトから引用)

 

現時点で分かっていることは、
  • 妊娠中、授乳中の新型コロナワクチンの安全性に関するデータは十分ではないものの、これまでの接種経験では、他のワクチンに比べてリスクが高いというデータはない。
  • 新型コロナによる妊婦の健康被害の可能性は低いはとはいえ、新型コロナにかかると、同年代の女性に比べて、集中治療や人工呼吸器が必要となるリスクは高い。合併症妊婦では死亡例の報告もあるので、いまのところ、妊婦は、高齢者、糖尿病、肥満の人と同様のハイリスクグループに含まれており、ワクチンのメリットがある。 

    2009年の新型インフルエンザ(現在の季節性インフルエンザ)に比べると、新型コロナのリスクは大幅に低いと報告されています。

     

  • 今回のワクチンは、これまで私たちが馴染んできたワクチンとは製法が異なり、理論的には、妊娠中、授乳中の接種による副作用は少ないことが期待されています。ただし、予想できない実際のリスクは現時点で不明です。

 

これまでのワクチンでは、
  • 風疹ワクチンなどの生ワクチンは、催奇形性のリスクが否定できず、接種できない。
  • インフルエンザワクチンは製造過程で鶏卵を使うので卵アレルギーの注意が必要。    
  • 製造ロット(生産単位)で品質にばらつきがあり、効果や副作用に違いがある。

 今回のワクチンはこれらの可能性は少ない。

 

結局、アメリカ・イギリスでは、

以上のような情報から、妊娠中の医療従事者、エッセンシャルワーカー、および、現在では一般妊婦も、ワクチン接種をするかどうかを自己判断して、希望者に新型コロナワクチンを接種するという方針です。

 

ワクチンを接種した際の注意

ワクチンを接種しても、妊婦はこれまで通り、基本的な感染防御策を継続する必要があります。

  • マスクをする
  • 3密を避ける
  • 手洗い、アルコール消毒
  • まだ、今は旅行を避ける
  • 職場は、勤務について配慮する
ワクチンの副作用

2回接種(2回接種によりワクチン効果が高まる)が必要なファイザー、モデルナのワクチンでは、特に2回目の接種で副作用が発生する可能性がありますが、これは一般の人と同じです。もし、ワクチン接種後に発熱した場合の解熱剤としては、アセトアミノフェンが望ましいとアドバイスされます。

アレルギー反応を接種前に予測することはできませんが、過去に重症のアレルギー反応、特にアナフィラキシーショックなどの経験がある人は、ワクチンを接種するかどうかについて、あらかじめ医師と相談する必要があります。

ワクチン接種後の妊娠

風疹ワクチン接種とは異なり、妊活中に新型コロナワクチンを接種しても、避妊する必要はありません。ワクチン接種後に妊娠が判明しても胎児リスクがある可能性は少ないとされています。

 

結局、今のところ、日本では?

日本では、妊娠中の医療従事者への先行接種の結果が集計されたのちに、一般の妊婦も接種するようになると考えられますが、これについては、その時の、世間の空気感に左右される事になるでしょう。

季節性インフルエンザのように、「妊婦へのワクチン接種を推奨する」となるには時間がかかると思います。

ただし現時点では、日本独自の判断として、医療従事者への先行ワクチン接種の場合でも、催奇形性のリスクを考慮して、妊娠12週以降に施行するという事になりそうです。

 

いずれは、季節性インフルエンザワクチンのように、妊婦はワクチン接種の推奨となるか、もしかしたら数年後には、通常の風邪ウイルスの1つの扱いとなって、ワクチン接種も行われなくなっているかもしれません。

 

主な引用元

www.cdc.gov