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新型コロナウイルス感染症と妊娠、授乳

連日、新型コロナウイルス感染の報道が続いています。情報は限定的ですが、今のところ、風疹、ジカ熱のような胎児異常、胎児奇形を引き起こす感染症ではなさそうです。

保護フェイスマスクを着用した町の女性。

 

最も信頼できる情報源であるCDCアメリカ疾病予防管理センター)のサイトから、妊娠、授乳に関するFAQ and Answersについての翻訳を紹介します。

以下、個人的な情報収集のための意訳(一部省略)です。詳細は原本を参考にしてください。

www.cdc.gov

 

新型コロナウイルス(COVID-19)感染症と妊娠 CDC

FAQ and answers  よくある質問と回答 2020年3月6日

    

妊婦

Q妊婦は、一般の人に比べ、感染しやすいですか? 重症化、発症、死亡のリスクは高いですか?

A妊婦の感染しやすさに関して、公表された科学的報告による情報はありません。

(一般的に)妊婦は免疫的・生理的な変化が起こるので、今回のウイルスを含む、ウイルス呼吸器感染症の影響を受けやすい可能性はあります。

同族コロナウイルスである2002年SARS(重症急性呼吸器症候群)、2012年MERS(中東呼吸器症候群)などや、他のウイルス性呼吸器感染症、たとえばインフルエンザなどにおける妊娠中の経験からは、妊婦は一般の人に比べ、重症化、症状発症、死亡のリスクはあるかもしれません。

妊婦は、頻回の手洗い、感染者・感染リスクのある場所を避けるなど、通常の感染予防策をしっかり行う必要があります。

 

Q:妊婦が感染すると、妊娠に有害な結果をもたらすリスクは高いですか?

A新型コロナウイルス感染が、妊娠に有害であるという情報はありませんが、同族コロナウイルス感染症であるSARS、MERSの際には、流産や死産が報告されています。

妊娠初期の高熱は、胎児に何らかの障害を起こすリスクの可能性があります。

注)高熱の定義は38.0℃以上。

 

Q:妊娠中の医療従事者が、感染患者を担当する、有害リスクはありますか?

A:妊娠中の情報は限られていますが、妊娠中の医療従事者は、感染予防のために保護される必要があります。感染患者の処置や、ウイルス・エアロゾルに暴露されるリスクのある業務を避けるよう、医療施設は、人員配置に配慮するべきです。

 

妊娠中、分娩中の伝染 

Q:妊婦が感染すると、胎児や新生児に伝染しますか? (垂直感染の可能性は?)

Aこのウイルスは、主に呼吸器からの飛沫を介して、感染者と密接に接触することによって広がると考えられています。

感染した妊婦が、胎児・新生児に垂直(母児)感染を起こす可能性があるかは、まだ不明ですが、査読された(信頼できる)文献によると、感染した妊婦から生まれた乳児の経過では、どの乳児もウイルスの陽性反応は示していません。さらに、このウイルスは、羊水や母乳から検出されていません。

同族コロナウイルスMERS、SARSにおける情報でも、垂直感染は報告されていません。

 

乳児 

Q:妊娠中に感染した妊婦から生まれた乳児は、有害リスクが高くなりますか?

A妊娠中、このウイルスが陽性となった母親において、早産のような有害事例の報告はありますが、これらが母親の感染と関連していたかは明らかではなく、現時点で、この感染症に特有の有害リスクは不明です。

このウイルスに感染した妊婦のデータから、他の呼吸器ウイルス感染症の経験、知識が参考になるかもしれないことが判明しています。

インフルエンザなどの呼吸器ウイルス感染症では、低出生体重児、早産などのリスクがあります。妊娠初期に高熱を伴う風邪やインフルエンザに罹ると、胎児に何らかの障害を起こすリスクがあります。妊娠中のSARS感染、MERS感染において、早産、低出生体重がありました。これらの有害リスクの可能性はあります。

 

Q:妊婦や新生児が感染すると、乳児の健康と発達に、長期的な影響を起こすリスクはありますか?

A現時点で、このウイルスに感染した乳児、または、子宮内でウイルスにさらされた乳児の、長期的な影響についての情報はありません。一般的には、未熟児、低出生体重は、長期的な悪影響と関連します。

 

母乳を介した感染

Q:授乳中の母親の感染は、母乳育児の潜在的なリスクとなりますか?

A:このウイルスは、濃厚接触による人から人への感染が報告されており、主に、患者の咳・くしゃみの際の飛沫により、感染が起こります。

これまでの報告では、感染した女性の母乳中に、ウイルスの存在は確認されておらず、母乳を介したウイルス感染の情報はありません。

SARSに感染した授乳中女性の報告でも、ウイルスは母乳中に検出されていません。

注)母乳から直接感染する可能性は低いかもしれませんが、授乳中の咳による飛沫や、手指から乳房皮膚を介しての感染はありえるので、授乳前の手指手洗い、マスク装着は重要です。