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現役産科医の視点

生命誕生の現場、産科医の視点から

「食の考察 和食1」 鯉こく

 

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ある経験豊富な助産師さんが、自らの体験を語っていました。

「自分がお産するまでは、おっぱいが出ないお母さんに『大丈夫、誰でも出るようになるから、頑張って……』って声をかけてたのに、いざ自分がお産したら3日目になっても、ぜんぜんお乳が出なくて、ほんとに焦って泣きそうだったわ」

北陸出身の彼女が実家に相談すると、すぐにクール便で鯉が送られてきて、それから毎日、”鯉こく”を食べたら母乳が良く出るようになったという話です。

 

母乳が良く出るようになる食事として、昔から知られている“鯉こく”。話には聞いたことがあっても、実際に食べたことのある人は少ないようです。

そこで、腕利きの調理師さんにお願いして、実際に調理してもらいました。調理師さんが長さ70cmの丸々と太った生きた食用鯉を締めます。暴れる鯉の頭を軍手で押さえ、頭部に包丁を入れて脊髄を切っても跳ね回っている。“鯉は生が強い”、食の戦い、まさに男の料理。

昔、妻のお産が近づくと、男は農作業や山仕事の合間に、貴重なタンパク源の鯉を捕まえて籠に入れ、きれいな水の用水路で飼っておき、お産が無事に終わってから、疲れた母親と母乳分泌のために作った料理が“鯉こく”。母乳は出始めの35日目が一番大事ですが、鯉一匹分を鍋で温め直したら、1人で1週間分ですから、たぶん、その料理は男の口には入らなかったんだろうな、と思います。

薄い味噌仕立ての“鯉こく”は川魚の臭さもなく、とても美味しかったのですが、少し小骨が多くて食べにくい。小骨くらい噛み砕いて食べるのが、カルシウムの摂取になるのでしょうけど、もしかしたら、昔の男は子供にしてやるように、鯉の身を口で噛み砕いてから妻に食べさせたのかもしれません。

今回、“鯉こく”料理を経験して、昔の人の思いが判った気がしました。