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現役産科医の視点

生命誕生の現場、産科医の視点から

酔ってエッチした時に出来た子供は将来、糖尿病になる?

「受胎前後に母親がアルコールを摂取していると、生まれた子供は将来、糖尿病になりやすい」という研究が話題です。これは米国実験生物学連合雑誌(20157月号)に掲載されたネズミの実験の研究報告によるものです。

 

妊娠が判ってからは禁酒をしていても、計画妊娠ではない方がほとんどですから、「排卵日の頃にお酒を飲んでいた」と思い当たると、妊娠中の方は不安に陥ってしまいます。では、どのような内容の研究なのでしょうか?

 

そこで、原著全文を入手し、研究内容を調べてみました。

FASEB journal 2015 Jul;29(7)2690-701 (リンク先は要約)

 

論文は、メスのネズミに、受胎の4日前から妊娠4日まで、アルコール12%の流動食を与えたところ、生まれてきた子供が発育後、高血糖、インスリン感受性低下を示し、糖尿病状態となったという内容です。

ネズミの妊娠期間は20数日ですが、その受胎の前後8日間に、アルコール入りの流動食を与えたということですから、かなり乱暴な実験と言えます。つまり酩酊状態で妊娠したということです。

 

どうしてこんな研究が行われたのでしょうか?

これまで病気の原因として、大きく先天性と後天性があるとされてきました。

● 先天性の病気:遺伝病、染色体異常、先天性感染症、多因子遺伝病など生まれつきの原因。

● 後天性の病気:感染症、外傷、栄養失調、肥満など出生後の生活習慣などによる原因。

 

近年、これらの病気の原因とは別に、DNAの遺伝子情報だけではなく、親から子供に伝えられる病気があることが注目され、特に妊娠中の母親が環境から受けた影響が記憶され、その子供が将来、生活習慣病や代謝疾患を発症しやすくなる事が判ってきました。

 

この研究そのものは信頼性の高いものですが、背景として、研究シナリオを証明するために、極端な状態を設定して実験を行ったと思われます。

 

今回の実験で言えることは、

妊娠するに至ったセックスの頃、毎日が酩酊状態で、お酒が全く抜けない日々だった人は、生まれてくる子供が将来、糖尿病になる可能性があるかもしれない。といった内容です。

 

古来、男女の出会いは祭りの時、年に数回だけ許されたお酒を飲んで、それで子孫を残してきました。毎日は、お酒が手に入らなかったのです。現在妊娠中の方が、たまたま、排卵日にお酒を飲んでいたとしても、アルコール漬けではない普通の人は、全く心配しなくて良いと思います。

 

ただし、妊娠を予定した方が、お酒を控え、禁煙し、偏食などを改善することは大事なことです。現代人の環境は子孫を残し、子孫を繁栄させるには多くの問題を抱えています。食生活を見直すことは重要な少子化対策1つです。