現役産科医の視点

生命誕生の現場、産科医の視点から

マタニティー・ワークプラン 働く女性と妊娠

なぜ、マタニティー・ワークプランが必要か?

 ・妊婦健診の特性

通常の診察では、症状(主訴)があり、それを元に診察や検査を行い、診断や治療方針が決まりますが、妊婦健診では、母児が元気な事を確認するのが目的なので、普通は、特別な診断や治療などはありません。

妊婦の皆さんも「妊娠は病気ではない」と言われ、気になる症状があり不安になっても、医師や職場に対して「こんなことを訴えて(お願いして)良いのか?」と、自分からは言い出しにくいものです。

妊娠中、産後に仕事をどのようにやりたいか、本人の気持ちをふまえて、医師と相談し、職場にあらかじめ伝えることは重要です。

 

・妊婦が働くということ

20年ほど前までは、日本を代表する金融、製造メーカーであっても、産休制度は有名無実、女性は結婚と同時に退職、または、妊娠したら産休までに退職が不文律で、産後に育児休暇を取って職場復帰するなどは問題外でした。

その状況はかなり改善されたとはいえ、今でも、口に出しては言わないだけで、事業主や上司の中には「妊婦は厄介」という意識を持つ方もいます。

「うちに産休制度はない」、「これまで産休を取った女性はいない」と言い切る会社もありますが、「会社として、今回は産休制度を導入したいが、どうしたらよいか?」と、前向きな会社も増えました。

一方的に「妊娠中はこうあるべきだ」と建前論を職場につきつけるのは解決策になりません。職場の状況や環境、妊娠の経過、本人の希望をふまえて、職場にうまく伝えることが必要になります。

 

マタニティー・ワークプランの実際

妊婦健診では、妊娠12週頃までに分娩予定日が確定し、一般的に産休に入る妊娠34週0日も決定します。また、その人の合併症(妊娠糖尿病・妊娠高血圧・内科合併症など)や、それまでの妊娠・出産・流産歴(早産経験・流産経験)などから、妊婦それぞれの注意点がある程度はっきりします。

この時期に、妊婦の希望をふまえた医師の指示として、事業主(上司)に提示できれば効果的です。

厚生労働省が勧める「母性健康管理指導事項連絡カード」を活用して、妊婦と医師が作戦を練って連絡カードを作成します。

このカードには、妊娠経過に異常がある(病的な)場合の標準措置に関する指導以外に、標準措置と異なる特記事項についての記入欄があります。妊娠経過が異常とは言えなくても、連絡カードの活用で無理なく仕事が続けられる工夫が重要です。

 

連絡カードの記入例

 「標準措置と異なる特記事項」の記入例(太字)を挙げます。

 

・夜勤業務は免除してください。

 職場によっては(看護師など)、日勤が続くより、むしろ夜勤を希望する方もいます。

・時間外勤務、残業は避けてください。

 どの程度まで許容できるか、記入内容は本人と相談です。

・(保険外交員、不動産会社など)新規契約ノルマの軽減をお願いします。

 大手の会社では、妊娠中は内勤に変えてくれる所も多いと思います。

 新規契約のインセンティブを放棄できず、頑張ってしまう方もいます。

・短時間(半日)勤務をご検討ください。

・通勤の負担軽減のために、時差出勤をお願いします。

 通勤ラッシュを避け、座って通える時間帯の方がストレスが減ります。

・通常、産休は34週0日(○月○日)からになります。

 妊婦を雇用した経験のない職場や自営業で、一般的な産休入りをあらかじめ明示するのは効果的ですが、これをはっきりさせると、雇用中止となる場合もあるのでカードを出すタイミングは、本人と十分な相談が必要です。

・外回り営業についてはバイクの利用は控えてください。

 ヤクルトレディー、ピザ・弁当の宅配など、頑張ってしまう方もいます。

・妊娠中の間接喫煙に関して、職場環境の配慮をお願いします。

 最近は、ほとんどの職場で改善されていますが、接客、営業職の中には難しい場合もあります。できるだけ努力してもらえるように促します。

・妊娠中の泊りがけの出張は避けてください。

自分のために必要なセミナーなどで出張希望のある場合はOKですが、本人が気が進まない(時に嫌がらせ)ような出張指示は避けるように指示します。

・産休、育児休暇、その後の職場復帰を希望しておられます。ご検討ください。

女性社員が育児休暇を取った経験のない事業所では、育児休暇後の職場復帰などは諦めている場合もありますが、本人の希望があれば、ダメ元で書くこともあります。

 

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